ゴーゴリ「死せる魂」

読んだはいいんだけど、これがすぐれているとか面白いとかどうもひと言では言い難い。というよりも、未完成で、主題に踏み込めていない感じがあるし、詐欺師の話として見れば「検察官」のほうが上出来というか、結局「鼻」とか「狂人日記」とか「ネフスキイ大通り」とかが面白いんじゃないのゴーゴリ。あと「外套」とか。
「我々はすべてゴーゴリの『外套』から出てきたのだ」とドストエフスキーが言ったとされているのが有名だけど、実際に言ったのかどうかも、その批評内容にしても信憑性とかはどうでもよくて、「外套」の戯画化された色々が奏でる喜劇性であるとか、社会風刺だとか、意味不明なオチとか、そういったものが、ユーモアでお茶を濁すごとく同時に存在していて、濁っているんだけど薄まってはいないというのが魅力なのかなぁ、と思うとも思わずともなしに書き連ねてみる。
「外套」の話しかしないのもあれか。「死せる魂」は中巻が作者生前刊行された第一部で、霊魂は不滅なのに死せる魂なんてタイトルはとんでもない! みたいなゴタゴタがあったとか。下巻は作者が書きかけて死ぬ前に破棄した第二部の草稿の生き残りで、結構話が飛び飛び。喜劇的で面白くはあるんだけど、喜劇って途中までじゃ消化不良なんだよね。最後のオチとか見たいわけですよ。しかし第一部だけで見ればまとまっているかと言うと、そうでもないように思える。むしろ第一部だけを出されて「これで完成です」と言われた日には怒りさえおぼえかねない。
まぁそんなわけで、最高傑作とは思わないな、というところ。ゴーゴリ読んだことないひとには「鼻」がオススメだと思います。でたらめで。どうせ「外套」と抱き合わせだし。ちなみに書いている途中で眠くなって、以降投げやりぽくなってますが仕様です。じゃない、それゆえ割り引いてお読み下さい。