パオロ・マッツァリーノ「反社会学講座」

表紙を見かけたことがある、というひとが多そう。あちこちで平積みされてたような。

反社会学講座

反社会学講座

と思ったので表紙を引っ張ってきてみる。背景色黒だと邪魔くさいね。
まず著者のプロフィールが傑作すぎるので引用しておく。

イタリア生れの30代。天然パーマでひげもじゃです。父は寡黙な九州男児、母は陽気な花売り娘でした。父はマッツァリーノ家の婿養子になりました。父の仕事の関係で、幼い頃から世界中を転々としました。父の仕事は家族にも知らされておらず、いまだに謎のままです。深夜に出掛けることが多かったので、スパイか、マクドナルドの店舗清掃員だと思います。マッツァリーノ家の女性はみな骨太で、母も予想に違わず、出産後に炭水化物の食べ過ぎで激太りしました。私は現在、千葉県の幕張に住み、講師の仕事の他に、立ち食いそばのバイトをやってます。将来はフランチャイズで独立希望です。

プロフィールとして見れば父と母の情報はいらないわけで、つまりほとんど関係ない話をした後で、本筋に戻るとオチが付いた、という構成だよな。大体内容もこの調子。
凶悪犯罪の発生件数がここ十年増加している。ここから結論を出すのが一般的な社会学(らしい)。更に遡ってみると、戦後はここ十年なんか目じゃないくらい犯罪が起きていることがすぐにわかる。マスコミに踊らされることを嫌うタイプの方々と、ひとを信用しないひとからすれば、相手が都合のいいことしか言わないのは分かり切ったことなわけだけども、このひとはわざわざグラフまで引っ張って来てこう結ぶ。

最も少なかった平成二年と、最も多かった昭和三十五年では、件数の差は六.九倍にものぼります。というわけで、本日ここに戦後最もキレやすかった少年が決定致しました。グランプリは昭和三十五年の十七歳、つまり昭和十八年生まれで平成十六年現在六十一歳の皆さんです。おめでとうございます。

まぁつまり、にやにやしながら読むにはもってこいの一冊。
内容を批判する知識があるわけではないのであまり大きな声では言えないのだけど、結局何を信用するかってのは、本人がどこで思考停止させるか疑うのをやめるか、ってことだと思うのですよね。まぁメジャーなものを批判しているから、というので飛びついてしまうんでは中二病とさしてかわりがないわけで。いや、べつにこんな水を差すようなことをいつも思っているわけではないのですよ。読み終わったら右から左でほとんどおぼえてなかったから無理矢理書くことを搾り出してきただけで。
ちなみにマイケル・ムーアとはあんまり似ていないように思います。アジテーション感が薄いんだね。あっちのほうを押し付けがましいとか、熱い(若干鬱陶しいの意を含む)とか思う俺のようなひとにはちょうどよく笑えてよろしいのではなかろうか。