大江健三郎『「雨の木」を聴く女たち』

レイン・ツリーについての本であるか女たちについての本であるか良くわからないタイトルだが、五篇全ての短篇に出てくるのは女のほうで、レイン・ツリーはタイトルに使われているだけであったりするが、まぁどうでもよい。全体にかなり密接な繋がりがあるので連作に分類(と思ったら普通にカヴァーに書いてあった)。

  • 頭のいい「雨の木」
    導入。くどいなぁと思いつつ読み進める。大江はやっぱり悪文書きだと思いますよ。意識的にやっているわけだから、どうのこうの言うより嫌いだと明言だけしておきますが。似たような話はポオも書いているのだけど、どちらも面白く感じないというのがポイントなのかも知れない(そもそもポオのコメディは新訳も出ないし面白くないのかも)。
  • 「雨の木」を聴く女たち
    ハワイとかキュウリとかの話。万延元年のフットボール(だったっけ?)を読んでいたほうがより楽しめるかもしれません。読んでいたが特に楽しめなかったというひとは私と感性が似ている可能性があります。
  • 「雨の木」の首吊り男
    ラテンアメリカあたりが舞台。割と読めた(面白いという意味だが面白いとは明言したくないときに使う言葉)。読めばすぐにわかるのだけど、骨格が他に比べてしっかりしているというか、ストーリらしい道がちゃんと引かれている。あるいは脱線がわかりやすい範囲にとどまっている。
  • さかさまに立つ「雨の木」
    連作形式の真骨頂。これまでの三篇すべてに関連してわけのわからない話を繰り広げてくれる。楽しめたもの勝ち。ストーリ的な部分は二の次で、形式や構成に酔えるひとにはおすすめ。自分では酔えると思っていたけどこれまで読んでいた変な構成の小説のストーリがいかに面白かったかを悟る展開になったので自分でも驚く。でも前半二篇よりは読めたと思う。
  • 泳ぐ男――水のなかの「雨の木」
    オマケ。序文もたぶん小説だと思います。メタファーとかシンボルとか難しいことを抜きにすると面白くないであろう小説。


まぁそんな感じだが、しかし俺は大江がよっぽど苦手らしい。まぁ最近読むのが遅くなっているのもあるんだけど。上のエントリから妙に時間が経っていますが、仕様です。ちなみにぶっ続けで書いているわけではありません。
もともと大江の小説が嫌いだったのは、感性のずれが大きかったからだと思う。描写が汚いというか。「奇妙な仕事」はそんなに嫌いじゃない、というのは、ストーリ的にいかにもあぁそうだろうなぁと思われるかもしれない。ちなみに死体プールの話は「死者の奢り」です。奇妙な仕事は犬を虐殺するほうです。まぁ読めなくはないということがわかったので、中条省平だったかの本で引用されていた宙返り鳩か何かの短篇を探してみようと思います。って初期にもどんのかよ。初期に比べて中年期のこっちのほうが読みやすいとかほざいといて、意味わからねぇよ。
というか今さっきウィキペディア読んで知ったのですが、伊丹十三の妹と結婚してんですね大江。知らなかったわ。