病状。

文章が書けない期間というのがあって、まぁもともと書こうと思って書くわけではないのでどちらかといえば常に書こうと思うと書けない体質ではあるのだが、それでも大抵の場合紙があったら何か書くことくらいは思い浮かぶものである。つまり思い浮かばないのが書けない期間だ。簡単に言えばここ二ヶ月くらいの話である。だいたいこの期間の特徴と言えば、睡眠時間が多い、頭痛薬の減りが悪い、睡眠時間のある位置が日によってぶれる、読書のペースが遅い、ぼーっとしていると番組の終わりまでTVを見ている、買い物に行っても何を買えばいいのかよくわからない、不意に息苦しさを感じる、ひげを剃り忘れる、視界がちらちらする、寝て起きてから昨夜歯を磨いていないことに気付くなどなどであるが、あるいは悪い病気である可能性もあるので病院へ行ってみると精神科を薦められるという微妙な感じである。問題は精神科を卜占と同程度にしか思っていないという点にあって、もっと問題なのは医者にかかる金なんてないぞという点で、ということは医者に行ったというのは嘘なんですかと訊かれたら、そこはやはり嘘ではないが昔の話であるというふうに返答せざるを得ないのかなぁと思ったりしていると今日も夜が明けようとしているのであった。
とここまで書いたものを読み返してみるに、別に二ヶ月前まで書いていたことと特に何か違いがあるわけでもない法螺話であるようだし、やはり問題となっているのは諸意欲及び注意力の低下といったところなのだろう。ところで長々寝るせいで妙な夢を腐るほどみた。
夢の話は面白くない上に、あまりに長すぎる上に、意味もわからない上に、読まれなくても一向に困らない上に、読まれたくもないような気がしなくもないから畳む。読むなというと、なら読んでやろうと思う人間がいるだろうとは思うのだが、その気力を一瞬で吹き飛ばす長さだと思う。
ひとつは荒野を高架になった道路が走っていて、どうやら俺はその近くの街に住んでいるのか、もしくは溜まり場にしている映画館のようなものがあるらしく、といってもそこで映画を見たわけではないので映画館とも言い切れない感じなのだが、建物の中に簡単な売店と奥へ続くドアがあり、外にもベンチがあったが良く考えるとあれは美術館か何かの出口兼入口のようなところなのかもしれない。と長々考えておいて申し訳無いが実はそこは全然話と関係ないので、ある日俺が友人らしき見覚えのないたぶん女性と高架の見える荒野を歩いていると、というか荒野と言ってもイメィジがわかないだろうからもう少し説明したいところなのだが、夜だったせいもあってこれは地球じゃなく別の星なんじゃないのかと思えたような草も生えていたりいなかったりするような土地で、とにかく川が流れていたので高架は完全に無意味というわけでもなかったことは言える。その友人と話しつつ散歩をしていると、高架に何かひっかかっているようなものが見え、まさかあの荒野に子供がいて風船を飛ばすでもなし、街のすぐ外で凧揚げするには川があってあちらまでいくとも思えない感じで、無風だったこともあって何かが飛んでいったとは考えにくいのだが、俺の頭の中にある高架道路のイメィジは高速道路なのであちらで誰かがスローガンでも横断幕にして垂らすとも思いにくいと視界の隅にとらえておきながら、友人とまったくおぼえていない会話をしていると、というのはちょっと嘘で、たぶん何か重要なような引越しに近い概念の行動を相手が取るのだけど、それでもう会えないかもしれないというような話だったような気もするし、引越すのはこちらのほうだったかもしれないし、引越しなんていうわかりやすい動作的なことではなく、もっと何かまったく未知の、一種の準別離的でかつ自らの意思ではどうにもならないような、とにかくたぶん重要なことを話していて、その会話を他人に聞かれたくないがために夜の荒野の散歩ということになったのだろうと考えれば筋も通っているわけだが、俺の注意が他の何かに向けられていることを相手も感じたらしく、怒ったように、といっても怒りを向けるわけではなく、冷ややかな態度で、こちらの、考えてもしょうがない的あいづちに同意して、じゃあ、また、と去って行ってしまったので、さすがに反省というか、後ろ姿を見送っていたのだが、やはりさきほどのあの引っ掛かっていた物体が気になって、川には入らないように遠回りをすることになるけれど近くまで行ってみようと思い、おそらく何度も昇ったことがあるのだろう階段で高架にあがると、この高架もかなり妙で、壁が高く、下から階段で昇っても中に入れるわけではなく、つまりは非常口でさえないわけだが、中で車か何かが走っているような気配は皆無であり、だいたい荒野に音らしき音なんて川音すらも聞こえないほど何かが動いているような音がまったくない。で、中にも入れず、さりとて特に手すりがあるわけではない、それなりに幅のある作業用通路のような部分をつたって、その引っ掛かった板のようなもののところまで行くのだが、すでに視点は自分を遠くから眺めていて、川の対岸からやや見上げるように、俺は俺を見ているようになっている。板を持ち上げようとしたのか、それともくっついていたものを剥がそうとしたのかよくわからないが、力の加減を間違えたらしく、板も俺ももろともにその手すりのない高架わき通路らしき出っ張りから見事に落下と相成り、幸か不幸か落ちた先が地面ではなく川だったため、落ちたにもかかわらず話はまだまだ続くことになる。
けど飽きたからもうこれでいいよね(ちなみに俺の予想ではここまで読んだ人間はいないはずである。上の長い段落を飛ばしてここを読んでいる人間はどうやら数名いるようだが、その人々も特に続きは期待していなかろうと思う)。落ちたら普通夢って終わりだしね。
ちなみに最後まで語っても板の正体は不明である。大きさは1m*1mくらいだっただろうか。もっと大きかったかもしれない。たぶん正体は俺が枕と重ねて背もたれ代わりにする茶色のクッション(60cm*60cm)で、枕の横に無造作に投げられているのを夢うつつに気にしていたのだろうと思うが、それでなぜ俺がタイムスリップをしなければならないのか謎である。
で、まぁ続き(何故?)。
目を覚ます、あるいは気が付く、深みから水面に顔を出す、いや、たぶん水の中ではなかったとは思うのだけど、とにかく見回すと、どうやら同じ川なのに周りには緑が茂っていたりしている。とても何というか、昔のSFみたいな展開になるのだが、そもそもそこから先が判然としない。和服を着た金持ちらしきひとに助けられ、どうやら川自体もそのひとの家の庭を通っているらしいのだが、酒を飲まされつつそこに至る経緯を語ると、50年前にタイムスリップしてきたんだね、と笑いながら言われ、他にも君みたいなひとが何人かいる、というふうなことも言われる。そこからそれなりの夢らしき理不尽かつ無軌道かつ無意味な流れがあるのだが、このへんが最も判然としないというか混然としていて、どうやってもとの場所にもどったのかは不明である。街へ戻ると出会った知り合いから、俺がいなくなって半年ほど経ったことを教えられる。これは、ほぼ夢オチに近いと考えて間違いないだろう。つまり、落ちて、気を失って、目が覚めると半年経っていた、というわけだ。その半年間行方不明であったことくらいが多少異色と言える(普通は病院で寝ている)。その知り合いによると、半年前散歩がてら話していた友人が、よほど心配していたというようなことも聞かされる。別れ方が雑だったし、あの日は若干感情的な対応になってしまったが、ああいった気の無いような反応も、相手からすれば悲しみを殺そうとした表情だったのではないか、というふうに思っているのだと言っていたらしい(世のすべての人間がこのような誤解を抱いてくれれば世界は平和である)。何故かまだ街に普通にいるらしいので(つまり引越しではないっつーことだと思うのだが、他に何か離別的なものを考え付かなかったのである。いや、手術とか色々あるんだろうけど)、その知り合いに言われるまま会いに行ってみる。特に歓迎もされないが、例の溜まり場のような映画館だか美術館だかの売店部分のところのベンチで、よそよそしいその友人にも半年の間に何があったのか話す(という、なんともメタな夢であったのですよ)。しかも俺が普通に夢にみて体験したことだけじゃなくて、俺が知らない体験を語ったりしてるのね(最終的に戻ってくるにあたっては両者の共通の友人が助けに来てくれた、というような話とか。ただ、この友人がどうやって助けたかは謎であり、かつこの街の住人でもないらしく、どのような友人で、何故両者ともが知っているのかはまるでわからない。懐かしい感じで語られていた人物なので、既に死者なのかとも考えてみるが、むしろどちらかといえば俺と友人がすでに死んでいると考えたほうが、世界観的にはしっくりくるようである。ただその場合、何十年の月日を越えて友人が助けに来るのは不可能な気がする)。
まぁこの夢はこのへんで目を覚ましました。妙な夢としか言いようが……(すっとばした後半部分が特に)。他にも同じくらいの長さのをふたつと短いもの断片的なものをたくさんみたけどとりあえず今日のところはさすがにもうやめます。