J・L・ボルヘス『続審問』 中村健二訳 岩波文庫

J・L・ボルヘス『創造者』 鼓直訳 岩波文庫

上は文学ネタのエッセイ集。下は詩文集。ラテンアメリカ文学文庫化推進のため閲覧者諸氏もこぞって購入するようにオススメしたいが、両方ともアァ、ぼるへす面白イナァという感じの本ではないところが困る。ボルヘスの読書領域の広さと博識ぶり(とともに読者の知識量の不足も)を知らしめる続審問のほうは、いわば他人の本棚を覗くたのしみに近く、たとえば目次で挙げられている有名な作家たちに、あるいは並列あるいは比較のため持ち出される他作家たちの名も本もを聞いたこともない読者にその内容を判断するのは妥当性を欠いているように思われる(まぁこの考え自体も相手の術中にはまっていると思われる)。それはそれとしてホーソン読みたくなったけど短篇集なんて見たことないぞ。何冊かは出ているようだけど。創造者のほうは面白いが、詩人としてのボルヘスに初めて触れるのがこの本でいいものかどうか……百科全書的小説の百科全書的になる前の段階を垣間見ているような面白さであって、詩として読んでいるわけでもないし小説として読むには無理があるようないわく言い難い文章。ボルヘスの小説を知る自分からすると、エッセイからも詩文からもボルヘスの小説を嗅ぎとってしまい、面白いが小説ほどではないように思えてしまうし、そう思う以上読んだことがないからこの文庫化を期に読んでみたいという人間がいたら伝奇集をすすめちゃうなぁ、という煮え切らない反応をするほかない二冊なのでした。まる。まぁいいんだ、とにかくラテンアメリカ文学を文庫化すれば売れると出版社が思えば良いのだから、読む気がなくても、とにかく買っておくようにオススメだけしておく。これが、最後で冒頭の話につなげると、全体がまとまって見えるという手法です。