法月綸太郎「ノーカット版 密閉教室」
新本格の作家は大抵ダメで、という割に結構読んだのだが、第一世代は法月くらいしか収穫は無かったようなものである。デビュー作「密閉教室」の、リライト前(後じゃない。島田荘司の「異邦の騎士」とは違う)のヴァージョン。長すぎたので削ったものが現在の文庫版。
推理物の古典はほとんど読んでいない俺が言うのもなんだが、パトリシア・コーンウェルみたいなのを読んだ後で、職業/素人探偵が歩いたり考えたり話を聞いたりして解決する話を読まされても、やはり時代を感じてしまう部分があるわけです。しかし本格ものの魅力ってのは確かにあって、古典までは手が伸びないのだけど、思い出したように手を出してみると新本格あたりがちょうどあったりする。時々良くわからないけど推理ものっぽいぞと思って読んでみると黒死館殺人事件のようなものが混じっていたりして混乱することもある。何の話だっけ?
法月が他よりも面白いというのは好みの問題であるように思うので語るだけ無駄かもしれない。立て続けに殺人が発生しない(とも限らないけど、大抵1件ないし2件の殺人を延々考えている。例えばこの「密閉教室」もそうだし「頼子のために」もそう。無駄に第二第三の密室とか発生するとだんだんそのアホらしさに興醒めてしまうよね)という部分なんか悪くないように思うし、探偵役がダメな男であるというのも良い(というのは、悩みであるとか、事件を解決しきれない部分であるとか。ここではとりあえず後期クイーン問題なんかは抜きにしておく)。
しかしとにかく俺が面白いと思ったのは「誰彼」。ミステリにはリアリティなんて別にいらないんだ、謎が魅力的でさえあれば。けどまぁ誰に薦めても良い反応が返ってきたことが無いから、これを面白いと思うのは少数派なのかもしれない(けど、法月を支持してるひとは結構多いような気がするんだが彼らは一体「密閉教室」とか「雪密室」とかを評価してるってことなんか? 俺は初期二作は相当面白くないと思うが)。
あぁやっと密閉教室の話に入れますか。あらすじ。登校したら生徒がひとり死んでた。教室で。んでその教室からは椅子と机がなくなってた。何故死んだ? 何故机と椅子は無くなった? という話。
荒唐無稽な話です。ていうか何故この話を二回も読んでいるのか自分でわからないほどの作品。端的に言うとほぼ駄作。いや、それは言い過ぎかも。でもこんな作品ばかり書いていたら確実に他の著書も買ってみようという気は起こさなかったでしょう。つまり、積読はこういうときに役に立つんですね。話がずれてますか。ずれてますね。