乙一『ZOO 1』『ZOO 2』

乙一で一番面白いのは「暗いところで待ち合わせ」であって、次点は「しあわせは子猫のかたち」だと思う。で、その順位はこれを読んでも動きませんでした。終。というわけにもいくまいよ。
1のほうは全体に薄味。映画のネタになった5本入り。で、全体に薄味。どうなんだそれ。

  • カザリとヨーコ 双子なのにカザリは可愛がられヨーコはいじめられ、というアレ。舞城が書いてたら別に違和感はなかったかも。文体が合ってないように思う。
  • seven rooms 姉弟が閉じ込められた部屋は水路で7つ繋がっていて……。あまりに色々なことが不明すぎて困る。
  • そ・ふぁー 母は父が死んだと言い、父は母が死んだと言う。これは俺最後いらないと思うわ。
  • 陽だまりの詩 目を覚ましたロボットが言い付けられたのはこの世に独り残った主人の来るべき死の後の埋葬だった。こっちはこれが良いくらいだなぁ。ところでこれとても乙一っぽい話だけど、もう少し話を細かくすると森博嗣っぽくなるような気がする。
  • ZOO 彼女が失踪した。だけど僕だけは彼女が死んでいることを知っている。表題作とは思えない気の抜けたティーソーダのような話。でもガソリンスタンドの部分は笑った。しかし正直言って笑うような話ではないんではないかと思わなくもない。

2のほうはユーモア寄り。書下ろしが入ってるのもこっち。

  • 血液を探せ! 事故で痛覚がなくなった爺さんが刺されて輸血用血液を探す話。これは笑える。ちゃんとオチもあるのが珍しい。というのは古い作品しか読んでいない人間には理解しがたいことだよね。
  • 冷たい森の白い家 悪趣味童話風。「石の目」も「暗黒童話」もそうだけど、あまりこの系統のは面白いと感じないなぁ。主人公が現代っ子のほうが面白い。「平面いぬ」とか。
  • closet 後ろ暗い過去を持つ女と夫とその弟とクローゼット。と妹と両親と昔の友人と妹の男友達二人。果たして登場人物はこんなに必要なのだろうか、と疑問が。
  • 神の言葉 言い聞かせれば相手はその通りのことをする。鬱過ぎ。その力はもっと他の、持て余している性欲とかのために使うべきだと思った。まぁ片思いの相手と反則技で付き合って、彼女は自分のことが好きなわけではないんだ、といったような悩みを抱えるというのは王道過ぎて面白くないが。
  • 落ちる飛行機の中で タイトル通りの短篇。コメディというよりコントか。最後のがなければ面白いで終われたのではないかと思わずともなし。
  • むかし夕日の公園で タイトル通りの小品。100篇くらいあれば楽しめるがこれひとつ出されても処置に困る。

全体として、もう少し順番を考慮しても良かったんじゃないかなぁ。本が薄いのはそういう層を狙っているからなんだろうと思って諦めているけど。