ディクスン・カー『皇帝のかぎ煙草入れ』

カーおもしれーな。古本屋でもあまり見かけないのは一部の好事家にしか愛されても読まれてもいないっつーことなのかもしれないが。
通りを挟んだ向かいの家で、骨董好きな家の主人が殺される。女主人公は部屋の窓から、その死体と逃げ去る茶色の手袋の人物を目撃。しかし同時刻前夫が同じ部屋で復縁を迫っていたのを婚約者に隠し通したいがために、窮地へと追い込まれていく。
アガサ・クリスティー絶賛らしいのだが、確かに心理のあやを巧みに扱った話運びなんかは好きそうな感じがする。素晴らしく無茶なトリック及びストーリ、というか読者からすれば容疑者らしい容疑者がせいぜいふたりしかいないので誰がやったかはたいして問題にもならない、のに面白い。
ちなみに何故かカーなのに密室の話じゃない。もうひとつちなみに、骨董好きのおっさんが殺されたときに見ていたのが、ナポレオン皇帝が使っていたとされる嗅ぎ煙草入れ。ナポレオンは全然話に絡んでこないので歴史嫌いにも安心して読める一冊。