アラン=フルニエ『グラン・モーヌ』

身悶えしてしまうような青春の書。萩尾望都なんかが描いているギムナジウムのイメィジで読んでしまいましたが、ギムナジウムはドイツ語なんですね。若干かそれ以上イメィジとは違うのかな。登場人物もあそこまで不安定な感じではない(作品名を挙げないとどこまでなのかさっぱりわからなくはないか)。
グランは多分greatのような意味なのだと思う。旧い訳だとモーヌの大将(どこのごろつきだよ。というかあんまり旧くもないことに驚く)となっていたりもする。作者は第一次大戦で若くして亡くなっていて、この一作しか残していない。総じてあまりハッピーな話ではないのだけど、読んで良かったと思うような本。サローヤンみたいな紹介文じゃないか。
二十世紀初頭フランスの田舎、主人公の家に転校生モーヌが引越してくる。モーヌは少年たちの中心となり、背の高さと存在感からグラン・モーヌと呼ばれるようになる。いたずらから農家を騙して馬車を借り出し、駅まで主人公の祖父母を迎えに行ったモーヌは、三日間の彷徨の末戻ってくると、主人公にその冒険を内容を語って聞かせた。
そんな第一部。夢のように語られるこの冒険譚だけでも読む価値あるわ。
若書きという感じは確かにあって、描写が薄いといえばまぁ薄いんだけど、話の省略の仕方がうまい(これも意図的なものってよりは才能なんだろうなぁ)ので、それもひとつの効果のようでもある。第三部後半あたりになると主人公たちが普通に成長してしまっているのも、なんだか妙な感じがして面白い。だんだんモーヌにおいしいところを総取りされている主人公も面白く見えてくる。