世界文学全集36 フォークナー 集英社

アブサロムはもちろん聖書が元ネタらしい(サムエル記?)、手元の辞書によれば《愛息;手に負えない息子》とのこと。タイトル「・」ではなく「、」なのは、"ABSALOM, ABSALOM!"でカンマが入っているから。引用なのか、ひとりじゃなくて二人の馬鹿息子ということなのか、呼びかけなのかは知らない。息子も手に負えないが、父親が手におえなすぎて困る。まぁそれはそれとして。
今まで、というかそもそもフォークナーを読み始めたきっかけが、ガルシア=マルケスの文体に影響を与えた作家、ということでだったわけで、サンクチュアリ短篇集八月の光と読んでも、まぁストーリが似ても似つかないのは当たり前として文体似てるか? と思っていたのだが、これはもう死語で言えばドンピシャってくらいど真ん中。確かに(話の流れは百年の孤独に文体は族長の秋に)似ているし、すげぇ引き込まれる。長さを感じさせないってーのはまさにこのことだわ。文庫が泣くほど高い(実物見るとわかるが、とても薄くて上下巻なのである)のは陰謀としか思えない面白さ。
話は実に簡単。なのだが、血縁関係がごちゃごちゃとわかりにくいの。数名から話を聞かされる脇役が話者。いや、むしろ聞き役なのではしょればはしょれる存在(今一瞬はしょるはら抜き言葉なのではないのかという疑問が頭をかすめた。病んでいるのかもしれない)。話してくれるひとからして親父から聞いた話とかだったりするので、これって疑ってかかれば実は尾ひれたくさん付いてんじゃね? と思ってしまうのは現代文学の読みすぎなんでしょうか(←だから現代文学ろくに読まないんだってば)。途中で話にのめりこんで、きっと彼は〜とかやりだしたりしているから余計疑いたくなるのだけど。

死んだ母親を埋葬する話。これもなんかすごく聖書っぽい感じの出来事満載で。
すごい何ていうか、アブサロムには登場人物表が付いていて助かっていたんだなぁと実感した作。まぁ親父以外みんな息子なんだけど(あ、ひとり娘。あと医者。あと薬屋。あとえーと金貸し。他にももろもろ)。要は誰が主要人物なのかがわかるのが強みなんですよ人物表。どうせ説明なんてろくに読まないし。アブサロムは系図も付いていてまぁネタバレ以外の何物でもないんだけどキャラクタの生没年とかで年齢差がわかりやすかったのはたいへん助かった。
で、死の床なんですが、子供なのか知恵遅れなのか詩人なのか天然なのかわからないキャラクタがいたりとか、回想と目の前の出来事がごっちゃになっているらしい感じがあったりとか、面白いには面白いんですが、文体なのか訳文の感じなのかが微妙に自分と合わないようでもったいない感じがしたりしなかったりした。

  • エミリーに薔薇を

薔薇がなかなかでてこなくてもどかしいよね! フォークナー代表作としておなじみエミリーに薔薇をですね。短篇集に入ってたんで再読。てか他の二短篇も入ってたような気がする。よくおぼえてないけど。
まずはエミリーが亡くなったところからはじまるんだから驚きである。しかも年老いた寡婦というのだからまた驚いてみる。誰がエミリーに薔薇をあげるのかなーと思っていると昔話が始まるが、ラストでそんなことをしていたのかとまた驚くわけである。
と言われて、騙されて読んで、それほど驚かないことに驚くのが理想である。

  • 髪の毛

床屋で働いている男の話。まぁ上のほうで白状している通り短篇集はあんまり琴線に触れてこなかったんですよねー。だからこのへんは再読して、あー全集にとられるだけあってよくできてんなーとは思ったけどそんだけなんですよねー。この作品にもオチがあるんだよねー。少し笑うよねー。

  • 乾いた九月

これはこっちの訳のほうが好きだなー。でもこの短篇一作で読んでも何をやっているのかよくわからないよなー。床屋が車から落ちてたりさー。


後半ぐだぐだなのは気のせいです(言い切り)。