打海文三『ハルビン・カフェ』

「きみの言うことは矛盾してるぞ。死んだら、わたしに復讐できないではないか」

このひとことに痺れた。言ってみたくも言われたくもないが。
舞台は福井県海市、中国韓国ロシアのマフィアが縄張り争いにしのぎを削り、警官の殉職数日本一の町で、殺された警官たちの報復を目的とした警察内部のテロ組織、それを組織ぐるみで護ろうとするノンキャリア叩き上げ警官達と、摘発を目指す内部監査官一党。マフィアの抗争に巻き込まれ撃たれた妊婦の腹から助け出された生まれながらの孤児が十年ぶりに故郷の地を踏んだわずか一週間の間に、二十年越しの泥沼争いの決着が付いたり付かなかったりする。
序盤どんどんキャラクタが増えてエルロイぽいかなと思ったのだが、中盤になると視点はかなり絞られて、あれ……序盤のあのキャラいらなかったんじゃね……という感じになりつつ、最後のあっけなさを加味しても、特に文句なく楽しめた。彼の人の動機が明確でないのはマイナスにはならないと思いますけど、という立場を取りたい。ただしセリフは変(みんな文章語で話す)。出て来る奴は半分かそれ以上死ぬのでハッピーエンド好きは敬遠して通るが正解(しかしそもそもハッピーエンドに落ち着くハードボイルドというのはどうか?)。