さみゅえるべけっともろいさんぶさく

モロイを読んだ。二部構成なのだが、特に前半、さっぱりわからん。ジョイスの弟子によるシュール系カフカという浅い読み。でたらめっぷりが面白くて、にやつきながら読んでしまうのは我ながらどうかと思うが、別ににやついている自分を延々見せられ続けるような拷問を受ける予定もないので、自重を心掛けつつ放っておく。
マロウンは死ぬも読んだ。モロイ、モラン、マロウン、とどことなく似たような響きの人物。癲狂院(てんの字はこれで正しいのか?)なんだか老人ホームなんだか貧民救済センターなんだか不明である舞台。シュールレアリスムに見られるような矛盾を、文章を書いた本人の自問自答のかたちで意図的に押し進めていく、というようなメタ。ほぼ完全なるたわごと。
名づけえぬものも読んだ。話者は死んだ。もはや話者は足が悪いとか病気とか体を動かせないとかいったものである必要さえ失った。話者は死んだが語られたものそのものと語ろうとしていた意志の残滓だけが残っていて、それがまだ聞くものを持たず自分だけを相手にして語っている。
楽しかった。文庫化しろ。
あとモロイは集英社三輪秀彦訳を読んだのだがアマゾンでは見つからなかった。マロウンもたぶん旧版でリンクのものではない。いつのまにやら三冊とも品切れとは笑うほかない。