C・D・B・ブライアン『偉大なるデスリフ』

たぶん今回読んだ三作の中では一番面白かった(というか期待度が低かっただけかもしれないけど。ギャツビィに向こうを張ったなんて、いかにも面白くなさそうなんですもの。別にギャツビィが嫌いなわけじゃないけどね)。
ギャツビィほど偉大でもないデスリフが、破滅的でもない生活をしたりしている話なのだが、フィッツジェラルドとは違う時代を描くことに成功しているように見える(酔ってクスリやってエロビデオ見てスワッピングするパーティーみたいな時代。そんな時代に「偉大」だったらそれはそれで異常な気もする)。第一部ではギャツビィのひそみにならって語り手は友人のアルフレッド某なのだが、第二部はデスリフ自身が語り手である点も特筆すべきところではないかな。アルフレッドにとっては偉大なデスリフですが、デスリフにはデスリフの悩みがあったのである、というお話。そう、やっぱりギャツビィと似てるな。わかりやすく悩みをわざわざ描いてくれたあたり、現代の阿呆な読者である俺には受けたというわけだね。ラストがすごい良い。映画ではこうはいかないですよね。
そうかギャツビィ新潮野崎孝訳なのか。角川で読んだのは夜はやさしだとかラスト・タイクーンだとか他の作がこっちでしか手に入らなかったから揃えた、というわけではなくて実は偶然(そりゃだって復刊された角川文庫リバイバルコレクションはカヴァー金ですもんね。短篇集は中公が三冊で多いし岩波新潮でもそれぞれ短篇集文庫あるし)。読み直してみようかなぁ(どうせ100円で手に入る)。