クライトン四題

去年亡くなったマイクル・クライトンの未読小説が積読山から発見されたので読んだ。非SFぽかったので放っとかれたんでしょうたぶん。

えー、前三分の一くらいが医学生のころの体験談で残りが旅の話。解剖、精神病棟実習、嘘をつく患者、訴訟天国でなかった時代の医療ミス、といろいろあって医者になるのはやめました、という話が前半。アジアアフリカヨーロッパへの旅とスキューバと動物いろいろと霊能力者と超能力開発の話が後半。エッセイ集と思えば話題の一貫性の無さも面白い。

こんな冗談が広まった。
解剖学の教授が教室で一人の女子学生に質問する。「ミス・ジョーンズ、刺激されると直径が四倍になる器官の名前は?」
彼女はへどもどして答えられない。
「そんなに恥ずかしがることはない、ミス・ジョーンズ。その器官というのは瞳孔だ――それに、きみは楽天家だな」

上巻p25

というのもあった。コピペの元ネタってより単に有名なジョークなんでしょうけど。
某アマゾンで「この本読んで超能力は実在すると思いました」みたいな話がなされていたような気がするんだけど、実在するかどうかわかんねーから実際体験してみよう→不思議体験した、という著者が「超能力のような現代科学で解明されていない力は経験上存在すると思うけど、超能力超能力者の大半は嘘のようだし、“〜〜ができる”みたいに主張されているそれらの力や何かが実在しているかは身をもって体験しないことにはわからないよ」と言っているわけで、まぁサクラがいると雰囲気に呑まれちゃうっぽい気がするので騙されないようにお気を付けくださいと言いたくなった。催眠や幻覚は集団のほうが起きやすい……とか思ってるのも相当空気読めない感じですけどね(でもこっくりさんとか子供のころ結構好きでした奥瀬サキは今も好きです)。

セクハラ訴訟が女性のものであった時代、逆セクハラ告発に奮闘する敏腕サラリーマンの一週間。コンピュータ開発関連会社が舞台で、フロッピーに替わる記録媒体としてCD-ROMを使うとかディスク読み書きの速度が遅いとかいった話をしていて、時代に即したネタなんだろうけど懇切丁寧な説明が邪魔と言えばまぁ目ざわり。十年前か十年後かCDを使わないような時代に読んだ方が良いんでしょうね。データ管理ソフトはCGで図書館のようなものを作って、ゴーグルディスプレイを付けて歩き回るとかいったSFぽいアレではあったんだけど、一体そのソフト(まぁハードも玩具に思えるけど)が役に立つのかは不明というか、おもちゃならおもちゃらしくしておけばいいのにというか、別にこの話にSF要素はいらないのではなかろうかと思ったような気がしないでもない。ああ、ちなみに、ぜんっぜんエロくはないです。

飛行機事故をネタに煽り立てるマスコミと航空機開発会社の事故原因究明チームの攻防。こんなのマスコミが悪役で決まっているのだから、話もそういうふうに落ち着きます。それなりには面白いので、ジャンボジェットについてのトリヴィアが欲しければ読んでもいいかも。

党大会を狙ったテロと阻止する人達の話。毒ガスといえば(あれ、これネタバレじゃね?)積んでた亡国のイージスもやっと読んだんだけど、あれもつまらなかったなぁ。爆弾と違って解除無力化の楽しみが少ないような気がしない? あ、この本に関して言えば、読んだ五分後にはだいたい内容忘れました。あれだね、一冊の本を延々何度も読む分には、すぐ忘れちゃったほうがいいのかもね。僕としては物足りないという気持ちでいっぱいです。

  • まとめ

クライトンの小説で一番面白いのはターミナルマン。次点にアンドロメダ。異論は認めない。上下巻になると話がややもたつく感あり。かといって短いほうが面白いわけではないのが困りもの。